トノサマバッタの卵を食べてみた
昨秋にトノサマバッタを飼育している方から卵のうをいただく。アイスクリームパックに1卵塊ずつ産卵させたものだ。卵は泡状の物質で覆って保護されている。カマキリの卵のうと似ている。産卵時に腹部は通常の3倍ほど伸びるため、地中に深く差し込んで産卵できる。そのため湿度が保たれ、外敵に襲われることも少ない。

いただいた卵のうは冷蔵庫に寝かせて春を待つことにする。3月半ばにパックを冷蔵庫から取り出す。ヒーターマットを敷いた上に飼育ケースをおき、そのなかにパックを並べ、孵化するかを観察した。
4月7日に最初の孵化があり、微小なベビーたちが次々に誕生した。イネ科の草を与えると、10日間で7ミリほどに育った。冷蔵庫に残してあった残りのパックを飼育ケースに追加して様子を見る。すると5月1日に2度目の孵化。ベビーたちは本当に可愛い。

これまでトノサマバッタの卵は食べたことがなかった。良い機会なので試食してみることにした。卵のうは泡が固まって砂とくっついているため、水洗いしてもなかなかきれいにならない。結構な時間はかかったけれど、それでもなんとか50個ほど砂を取り除くことができた。沸騰したお湯のなかに卵を入れて数分間加熱する。やっと試食タイムだ。


7ミリほどの細長い卵は、一見すると今にも動き出しそうな何かの小さな幼虫に見える。初物だから五感を研ぎ澄ます。つまんで口に入れ、舌で転がす。舌触りは何の変哲もなく無味。思い切って噛んだ瞬間、予想もしなかった歯ごたえに驚く。皮の弾ける音が聞こえそうだ。「プチン」より「ブチン」がふさわしい。皮が弾けると卵黄に似た、だがもっと淡い甘みを舌先に感じる。ナッツと草のような香りが微かに鼻腔を抜ける。その後弾けた皮の渋みがやってきて、甘みと渋みがほんのり後味として残った。