昆虫食に関する本
昆虫食について本を読んで知りたい!と思っている方のご参考になれば幸いです。
こんにちは、清田彩です。私が今までに読んだ本の中から「昆虫食に関する本」の感想を綴っていきます。
今回感想をお伝えする本のタイトルは『蜂と蟻に刺されてみた』(ジャスティン・O・シュミット、今西康子 訳、白揚社/2018年)です。

著者は2015年にイグ・ノーベル賞を受賞した生物学者です。
昆虫毒の化学的性質の専門家であるシュミット博士は、自分の体で虫刺され実験を行って、その痛さを数値化した「シュミット指数」を作った功績で受賞されました。
「痛みの鑑定人」「毒針の王」などと呼ばれているそうです。
この本では、ハチ・アリ82種に刺されたときのシュミット指数と、それがどのような痛みなのか解説されています。
虫刺されの本に昆虫食っぽいことがどう書かれているかというと、鳥がミツバチを飲み込む姿を目撃したことがきっかけで、博士はその味に興味を持って食べてみようと思ったそうです。
働きバチを食べてみた感想をこのように記しています。
「頭部をバリバリかむと、マニキュアを剥がす除光液のようないやな臭いがした。胸部はなかなか美味だが、翅と脚の部分がプラスチックのようにもそもそする。腹部は、テレピン油と腐食性の薬品を混ぜ合わせたような恐ろしい味だった。」
つまり、恐ろしく不味いとのことです。
ミツバチの働きバチは全てメスで、オスは刺すことができないうえに、大きな分泌腺がないそうです。いやな臭いや味は、働きバチが分泌する物質の味でした。
鳥が吐き出したミツバチの頭部を分析してみると、すべてオスバチだと分かったそうです。刺す危険性があるうえに不味い働きバチは食べずに、オスバチだけを狙って食べていたのです。
シュミット博士はもちろんオスバチも食べています。
カスタードのような味にカリカリした歯ごたえがあり、働きバチへの評価とはうってかわって、オスはなかなか美味しいとのことでした。
セイヨウミツバチのシュミット指数は、4段階中レベル2です。
ちなみに、日本でたびたび確認され恐れられているヒアリは、レベル1でミツバチよりも軽い痛みだそうです。(毒性のレベルではなく痛みのレベルです。)
博士がハチを食べてみた話だけでなく、カリフォルニア先住民の昆虫食の話も書かれています。
あるとき、カリフォルニア先住民の伝統文化を研究していた修士学生から電話がかかってきたそうです。
それは、カリフォルニア先住民の儀式ではシュウカクアリというアリを食したとのことから、アリ毒が幻覚を起こす可能性があるか知りたいという内容でした。
「ピジョン・クエスト」と呼ばれる儀式では、部族の若者たちが数日間の断食後に大量のシュウカクアリを食べました。
飢えと渇きに耐えながら、人生の質を高める「夢の導き」を乞うという、苦行です。
電話をかけてきた修士学生は、この「夢の導き」はアリ毒によって幻覚を起こしているのではないかと考えていました。
儀式では1人で350匹ほどのシュウカクアリを食べたそうです。
シュミット博士によると、この量は亜致死作用を起こしてもおかしくない量であり、儀式のさまざまな要素が加わると、幻覚を起こす可能性は十分にあるそうです。刺された痛みでトランス状態になることも…。
シュウカクアリのシュミット指数は、非常に高いレベル3。シュミット博士が「一目惚れならぬ、一刺し惚れである!」と言うほど魅了されてしまった特殊なアリです。
刺された瞬間は痛くないけれど、しばらくして痛みに気付くと、どんどん痛みが増して、長くて12時間痛みが引かないというしつこさがあるそうです。
シュミット指数には、それぞれの虫に刺されたときの感じ方が添えられていますが、そのコメントが分かるような分からない説明でした。
詩的で惹かれたコメントを少し紹介します。
「ハッと目が覚める感じ。強烈に苦いコーヒーを飲んだときのような」
「子どもの投げたダーツが的を逸れて飛んできて、ふくらはぎに突き刺さったような」
「焼き上がったばかりのクッキーをオーブンから取り出そうとしたら、鍋つかみに穴が開いていたときの感じ」
「快楽に近い刺激。恋人にちょっとだけ強く耳たぶを噛まれたような感じ。」
どの虫に刺された感じなのか気になったら、ぜひ本を読んでみてください。