昆虫食に関する本
昆虫食について本を読んで知りたい!と思っている方のご参考になれば幸いです。
こんにちは、清田彩です。私が今までに読んだ本の中から「昆虫食に関する本」の感想を綴っていきます。
今回感想をお伝えする本のタイトルは『絶倫食』(小泉武夫、新潮社/2010年)です。

東京農業大学の名誉教授による、精のつく食べ物にまつわるお話がまとめられた本です。東京農大は私の母校でもあります。
自称食の冒険家である著者は世界中を食べ歩いてきたとのことで、この本には精がつくとされる世界中のあらゆる食べ物が登場しますが、ここでは虫だけを紹介します。
昆虫食ではおなじみの虫に意外な効果があったりします。
中国では竹や筍が強精剤として昔から利用されていて、その竹を食べて育つ竹虫にも同じ効果があるようです。
著者は貴州省や雲南省を旅しているときによく竹虫を食べていたそうで、その翌朝に効果を実感していたとのことです。
竹虫は日本にいても食べることができます。
私が知るかぎり、高田馬場にあるミャンマー料理のお店で食べられますし、竹虫スナックをネットショップで購入することもできます。
スナックはサクサクと軽い口あたりで、竹虫ならではの爽やかな風味が良いのでおすすめです。ただ、著者のように効果が実感できるかどうかちょっと疑問が残ります。
中国ではほかにも、カマキリの卵は「桑螵蛸(そうひょうしょう)」といって絶倫食とされているそうです。幼虫が孵る前のスポンジのような塊を酒に漬け込んだり、粉末にして服用します。
さらに、ツマキクロカメムシを乾燥させた「九香虫」は、男性生殖器の機能低下あるいは不能時に用いるそうです。
世界の国々を見渡しても、虫にはその手の効果が結構信じられているみたいです。
虫が入っているメキシコのお酒「メスカル」は、その昔ある人がビンの底に残った虫を食べたところ妙に元気になったという話から、精がつくお酒として有名になったそうです。
南米ペルーでは2mもある大ミミズ、隣のボリビアでは牛の血を吸わせたヒル、カンボジアでは5本角のカブトムシ(男根に角が生えるらしい)、といったものを食べると精がつくと書かれています。
この凄そうな5本角カブトムシ以上に効果があると信じられているのが、赤アリだそうです。おそらく、昆虫食でおなじみのツムギアリのことだと思います。
日本でもアジア食材店で缶詰が売られているのでよく使っています。缶詰にしてはかなり高価だと思っていましたが、5本角カブトムシ以上なら納得のお値段です。
著者が海外で教わったという料理は、私も真似して作ってみたくなりました。
2008年にグルジアに行ったときに、9人子供がいるという農家の夫婦からスタミナ料理を教えてもらったそうです。
それは、ヨーグルト入り卵焼きにチーズと蜂蜜を巣ごとかけた食べ物で、蛹や成虫が何十匹も混じった見た目は万人受けしないとは思いますが、味は間違いなくおいしいと思います。
昔の日本で精力剤として使われていた食べ物もたくさん紹介されています。
そしてやっぱり、日本でも虫は精がつくと信じられていました。
日本に現存する最古の医学書『医心方』には、交尾しない雄の蛾を材料とした丸薬や、女性用はミツバチの巣を使うなどの妙薬の作り方が書かれているそうです。
さらに江戸時代には、「蝉酒」という民間に伝承された強精強壮酒がありました。
「蝉酒」は、串刺しにしたセミを火で焙ってから酒に漬け込んで作ります。どんな成分なのかは不明ですが、セミの強壮成分が溶け込んだ酒は即効性があったとされています。
セミ自体が風味の良い昆虫なので、効果のほどはともかく、おいしいお酒が出来そうな気がします。
江戸の薬屋には強精剤・精力剤としてさまざまな動物の干物や粉末や黒焼きが並んでいたそうですが、その多くは高価なもので、庶民でも手が届くのはトンボ、ミミズ、カマキリなどの虫だったそうです。
この『絶倫食』の中で、こんなに虫が登場するとは思いませんでした。
昆虫食を絶倫食と呼ぶには怪しいかもしれませんが、スタミナ食くらいなら言ってもいいと思いませんか。